よくあるご質問

A.ほとんどのお母さんたちは、赤ちゃんを母乳で育てたいと思っています。それは、母乳育児が、栄養面や免疫などの効果に加えて、お母さんと赤ちゃんの「きずな」を深いものにする効果をもたらしてくれるからです。赤ちゃんにとってはミルクをあげるより大きなメリットがあるのです。でも、出産してすぐに、水道の栓をひねったように、母乳がたくさん出て赤ちゃんが満足してくれるわけではありません。母乳分泌が始まるまでの出産後3日間ほどは赤ちゃんの「ぐずり」や「泣き」で寝る間もなく授乳しなければならず、お母さんは大変疲れてしまいます。この苦労は報われるのは常ですが、一方で軌道に乗るのに時間がかかるお母さんもいらっしゃいます。このようなお母さんには医療者の立場からの援助が必要となるでしょう。  母乳育児支援は、一人でも多くのお母さんがそのお母さんとお子さんなりの母乳育児を確立して継続できるように、妊娠中、出産のための入院中、そして退院後も、場合によっては赤ちゃんが1歳以上になっても、いろいろなアドバイス、援助、手技、ときにはお薬を通して、お母さんを支えるようにすることです。これが、ひいては、赤ちゃんの健やかな成長や発達につながっていきます。
A.病院を受診した時、「薬を飲んでいる時は、授乳を中断してください」と医師・薬剤師に伝えられ、心配になったのですね。現在、お薬の説明書にもそのように記載されているので、そのように伝えられるのも全くの間違いではありません。
確かに母乳中に薬は分泌されます。ですがその量や赤ちゃんへの影響は、薬によって様々であり、その説明書の記載も必ずしも科学的根拠に基づいたものではありません。海外ではすぐに授乳中止とするのではなく、各々の薬の特徴を調べた上で、お母さんに情報を提供しており、不必要な断乳を避けるようにしています。
現在、授乳と薬の両立ができる薬は約8割あると言われています。その中には、「授乳は中止することはないが気を付けること」、という薬も含まれています。そのような薬の場合は、小児科医を始めとした医療従事者に相談しながら決定することをお勧めします。 また、国立成育医療研究センターホームページの妊娠と薬相談センター「ママのためのお薬情報」(https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/index.html)には、授乳中に安心な薬が表となって掲載されており、誰でも閲覧できます。ぜひご活用ください。
現在、母乳の利点を踏まえ、日本でも厚労省がお薬の説明書の改訂作業を行っています。今後は少しずつ、医師や薬剤師の授乳に対する説明も変わっていくことが期待されます。
A.授乳を続けていても妊娠・出産は可能であることが多いです。授乳に伴って上昇する「プロラクチン」というホルモンは一般的に排卵を抑制するとされていますが、授乳中でも月経が再開して妊娠する方も多くいらっしゃいます。ただしそれは、その人その人の体質によるところが大きいです。 ご家庭の事情などで妊娠を急いでいる場合や、不妊治療の兼ね合いで授乳をやめるよう言われるケースもあります。主治医の先生とご相談なさってみてください。
A.断乳することを決めた場合、急な断乳は乳腺炎などのトラブルを起こしてしまうことがあります。トラブルを防ぎながら授乳を終わらせていくためには、2週間に1回を目安に授乳の回数を減らしていく、という方法があります。お子さんとはたくさん遊んだりして、授乳の回数は減ってもママが離れてしまうわけではないことを伝えるようにしましょう。また母乳を飲まなくなる分、水分や食べ物を欲しがる量が増えることがあります。様子を見ながら適宜追加してあげてください。 離乳食が完了していない時期の断乳の場合は、ミルクを追加することが必要になるかもしれません。与える量や方法などについて困った場合は、地域の開業助産師や保健センターの育児支援の窓口などにご相談なさってみてはいかがでしょうか。
A. UNICEFF/ WHO1)では「母親が種々の食品を充分に食べれば、必要なたんぱく質、ビタミンとミネラルがとれます。母親は母乳育児をしているときも、特別な食べ物を食べたり、特定の食べ物を避ける必要はありません」2)と言っています。また、「たくさんの種類の食品がとれなかったり、1回位食事が食べられなかったりしても、母乳産生は減りません」「母乳育児中の水分は、のどの渇きに応じてとるべきで、必要以上にたくさん飲んでも母乳産生は増えることはありません」とも言っています。 もう少し具体的なお話をしていきましょう。授乳中のお母さんの必要なエネルギーは、妊娠前の食事に+350Kcal/日に設定されています3)。短期間であれば、それ以下でも母乳の出や、赤ちゃんの発育に影響はないと言われています。また、赤ちゃんのアレルギー予防の為に、授乳中のお母さんが食事制限(卵、大豆製品、乳製品等のたんぱく質制限)をする事は効果が証明されていず、奨励されていません4)。一方で、厳格な菜食主義(乳製品、卵も食べない)では、母乳中のビタミンB12欠乏を起こす事が知られているため、ビタミンB12の補充が勧められています。 このように母乳のために良い食べ物も悪い食べ物もなく、授乳中でも普段と変わらずバランスの取れた食事を心掛けましょう。お手持ちの母子健康手帳に掲載されている「妊娠中と産後の食事の目安」を参考にしてみましょう。 言葉・参考文献 1)UNICEFF/ WHO:国連児童基金/世界保健機関 2)UNICEFF/ WHO(著)、BFHI2009翻訳編集委員会(訳)(2009)   UNICEFF/ WHO赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイド~ベーシックコース「母乳育児成功のための10カ条」の実践 P283-284、医学書院 3)厚生労働省算定「日本人のための食事摂取基準(2010年版)」 4)AMED研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2017」 ・NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(著)「母乳育児支援スタンダード 第2版」(2015) P401-407 母乳育児中の母親の食事/乳質、山本よしこ、医学書院
A.答えを先に言えばお酒を楽しみながら母乳育児も楽しめます。但し、いくら飲んでも大丈夫という訳ではありません。これまでの文献には以下のように記載されています(2012年周産期医学vol.12増刊号)。 まず、飲んだお酒のアルコールは飲酒後30~60分で母乳内に出現します。お母さんの体重の0.5g/㎏内の量であれば2~2.5時間で母乳から消失するのでアルコール0.5g/㎏の量であれば許容範囲とされています。でも飲み過ぎればそうはいきません。 では0.5g/㎏とはどの位の量でしょうか。計算上は体重50kgであればアルコール量25g、60kgであれば30gという計算になります。 お酒の種類別に見れば25g、30gとはどの位の量になるか計算すると、 ① ビールは5.5%=5.5g/100mLですので25gで450mL、30gで550mL。 ② ワインは13.5%=13.5g/100mLなので25gで185mL、30gで220mL。 ③ 日本酒は15%=15g/100mLなので、25gで170mL、30gで200mLという計算になり ます。 ちなみに欧米ではアルコール10gを1 drink、20gを2 drinkとして1~2drinkが授乳中の飲酒量の目安とされています(図参照)。 これ以上の量の飲酒量は母乳分泌が悪くなるという理由から推奨されていません。勿論飲み過ぎた段階での授乳は赤ちゃんが急性アルコール中毒になる可能性もあり、禁忌です。 尚、オーストラリア国立保健医療研究会は次のようなまとまった声明を2010年に出しています。 1. 授乳期間中は飲酒をしないのが最も安全な策である。 2. 特に母乳栄養が確立されるまでの生後1カ月の間は禁酒するべきである。 3. その後に飲酒する場合は 1) 一日の飲酒量は2 drink(日本の1単位)以内にとどめる。 2) 授乳直後に飲酒し、飲酒後2時間以上たってから授乳する ま、ほどほどに楽しむのはいいですよ、というところでしょうか。 Q.コーヒーはどうでしょうか? A.コーヒーに限らず、紅茶、緑茶、コーラや栄養ドリンクにもカフェインが含まれています。従ってコーヒーや紅茶についてはカフェイン量が母乳に与える影響を考えることになります。 カフェインの覚醒作用や興奮作用により、赤ちゃんの不眠、不機嫌、いらいらなどを生じます。アルコールと違ってカフェインの濃さは同じコーヒーや紅茶でも淹れ方で異なり、量の決定は難しくなります(表参照)。 許容量は米国ではコーヒーで5杯くらい、ヨーロッパでは3杯くらいとされていますが、一方でその程度では赤ちゃんの症状に差が無かったという報告もあります。いずれにせよ2-3杯程度とするか、カフェインレスのコーヒー、紅茶にすることが望ましいです。 尚、コーヒー、紅茶、緑茶にはタンニンが含まれており、タンニンは鉄の吸収を阻害するため、母子ともに鉄剤を服用中にはこれらの飲用は控えた方がいいです。 *表や図に関しては「会員様向けコンテンツ」にてご覧いただけます。
A.むし歯に悩まされず、母乳育児を楽しむ方法はあります。このごろは長期授乳が推奨されていますので、3 歳4歳まで授乳を続けることも珍しくありません。しかし歯科や保健センターの健診に行くと、いまだに1歳で断乳を勧められることがあります。長期授乳はお子さんの歯並びや噛み合わせに良いだけでなく、全身の感染症や様々な病気の発症や重症化を防いでくれること、お母さんの乳がんや卵巣がん、大腿骨骨折を減らしてくれるな ど、母子双方の人生の長い時期まで良い影響がたくさんあることが報告されています。 授乳していてもむし歯にさせないような口腔ケアを心がけましょう。
A.歯が生え始めたら磨きはじめましょう。前歯だけならガーゼでも、歯ブラシでも結構です。前から数えて4番 目の臼歯(噛む面のある歯)が生え始めたら歯ブラシが必要です。こどもは自分では満足に歯を磨けませんので、幼稚園までは大人が主体の歯磨きが必要です。しかし手首の運動が成熟してくるまでは充分に歯を磨けません。遠近感のある絵が描けるようになるまではせめて永久歯だけでも大人が補助してあげましょう。それが小学校高学年です 。
A.むし歯は唾液の少ない夜に進行しますので、夕食後に磨きましょう。1日以上たった成熟した歯垢が歯を溶かします 。24時間に1回は確実に歯を磨きましょう。また、食べ物やジュースなど糖分が入ったものをしょっちゅう口に入れられる状態にしておくと、むし歯になりやすくなるので、だらだら食べ続けないようにしたり、食後には水やお茶を飲ませて常に口の中に食べかすがないようにしましょう。
A.むし歯になりやすいところから磨きましょう。最初に上の前歯の前後ろ。次に上の奥歯の頬っぺた側(そのまま噛む面と内側も磨きましょう)。3番目は下の奥歯の舌側です(その流れで噛む面と外側も磨きましょう)。最後に下の前歯を磨きましょう。最初にここから歯から生えてくるので、ついついここから始めがちですが、ここはむし歯になりにくいところです。こどもの仕上げ磨きはすぐにタイムアップしますから効率よく磨きましょう!(会員専用ページ内の「おっぱいっことお母さんの歯の健康」の 本に写真があります) 仕上げ磨きはプロレスみたいなものです。泣かせずに磨くうまい方法などありません。愛情をもって 羽交い絞めにしてがしがし磨いてあげてください。 しかしどうしてもむし歯になってしまうことはあります。泣き叫ぶ乳児でも嫌がらずにむし歯の治療をして、口腔ケアについて教えてくれる歯科医を探しましょう。
A. お母さんが母乳育児をしたいという意思をもって行動すれば、およそ30%のお母さんは母乳育児ができるようになるとされています。でも、95%のお母さんが母乳育児をしたいと希望しているという調査結果があり1)、母乳育児への意思だけでは残りの65%のお母さんの希望はかなえられるものではありません。  母乳育児を確立するための方法として、WHO(世界保健機構)は「母乳育児成功のための10ヶ条」(https://10steps-prj.net/whats-tensteps/)を提唱しています。そこには、出産後すぐに赤ちゃんをお母さんの胸に乗せて(早期母子接触)、その間におっぱいを吸えるように手助けをする(早期授乳)、また赤ちゃんとお母さんは同室として(母子同室)、赤ちゃんが望む時にいつでも授乳できるようにする(頻回授乳)などが書かれています。これらさえ実行できれば、およそ60%のお母さんは母乳育児ができるようになるのです。  一方、高年齢や、帝王切開分娩、扁平や陥没乳頭など母乳育児開始がスムースに始められないお母さんも多くいらっしゃいます。このようなお母さんに医療者は心身両面に向けて支援をします。はじめはミルクを補足していても、1週間先や1カ月先、またもっと先に母乳育児ができるようになればよいのです。また、ミルクの補足が続いても、お母さんが赤ちゃんにおっぱいをあげていれば、母乳育児をしていることになります。「完全母乳」にこだわる必要はありません。母乳を主とした混合栄養であっても、母乳のメリットを受けられますし、おっぱいを通した母子の「きずな」は深まるものです。母乳育児をしたいという意思を持ち続けつつ、完全になろうとして頑張りすぎず、心に余裕を持って育児を続けられればよいのです。 1)平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要、第1部 乳幼児の栄養方法や食事に関する状況 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000134207.pdf
A.<食べさせてはいけないもの> 蜂蜜、黒砂糖、コーンシロップ、井戸水(これらは全て1歳を過ぎるまで口に入れさせてはいけません):ボツリヌス菌による汚染の可能性があります。加熱してもダメです。 <注意したほうが良いもの> 卵、乳製品、小麦、そば、フルーツ、エビ、カニ、ピーナッツ:食物アレルギーの可能性があるので、初めての食品は小児科が診療をしている平日の日中に、少量から、単品もしくはこれまで食べて問題が無かったものと始めましょう。 卵:固ゆでの卵黄を少量から始め、様子をみながら全卵へとすすめます。 そば:強いアレルギー症状を起こすことがあるので注意が必要です。 牛乳:飲料とするなら1歳を過ぎてからにしましょう。牛乳にはカルシウムとリンが多く含まれるので、腸からの鉄の吸収を妨げ 鉄欠乏性貧血を起こすことがあるためです。鉄欠乏性貧血は中枢神経の発達に関わります。 塩分・油分・脂肪分・調味料・食品添加物を多く含むもの:中毒や体調を崩すことがあります。 例)練り物、漬物、インスタント食品、イオン飲料、ジュース、スナック菓子など 生もの:細菌が繁殖している可能性があります。 例)生卵、刺身など カフェイン:こどもはカフェインに対する感受性が高いと言われています。 例)緑茶、ウーロン茶など アルコールを含むもの:加熱してアルコールを飛ばせば使用できます。 例)みりん、料理酒など アボカド:脂肪分が多く、アレルギーの可能性があります。 銀杏(ぎんなん):中毒の可能性があります。 誤嚥や窒息に気をつけたいもの 弾力がある固めのもの(こんにゃくゼリー、グミ、チーズ、もち、みたらしだんご、白玉だんご、マシュマロ、練り物、肉、ホットドックなど) 水分が少なく固いもの(一口サイズにしたりんご、にんじん、サトイモなど) そのまま飲みこめるもの(ミニトマト、ぶどう、豆類、ナッツ類、あめ玉など) *特に豆やナッツ類は気管支に入って、重症になることがあり危険なので、3歳(~5歳)までは小さくても固形では与えないようにしましょう。 のどに張り付く可能性があるもの(トマトの皮など) 消費者庁 食品による子供の窒息事故に御注意ください! https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/170315kouhyou_1.pdf
A.母乳はお子さんの心の栄養でもあります。お母さんはお子さんが保育施設に行くことは分かりますが、お子さんは突然お母さんと離れてしまい不安を感じるかもしれません。言い聞かせていたとしても理解はできていないことがあるからです。保育施設から帰ってきたときにお母さんの胸に抱かれ、おっぱいを吸うことで心の安定が図れ、不安の解消につながります。また1歳過ぎでも母乳には免疫成分が含まれています。初乳よりも増える成分もあります。授乳を続けることでお子さんの不安、集団生活によるストレスや、病気に罹るリスクを減らすことができます。可能であれば、入所後もお子さんの心のよりどころとして続けていただくことをおすすめします。朝に出掛ける前、夕方仕事から帰ってきた後、夜間、休みの日など一緒に過ごす間は、お子さんの欲しがるサインに合わせて授乳しましょう。 <卒乳と断乳の違い> お子さんが自然におっぱいから離れていくのではなく、お母さんの理由で止めることは卒乳ではなく断乳と言います。卒乳はお子さんが自ら「もうおっぱいはいらないよ」と自然に哺乳しなくなることを言います。
A.仕事中、おっぱいが張って大変という方は、昼休みや休み時間に乳房全体が少し軽くなるまで搾乳すると徐々に落ち着きます。 職場で衛生的に搾乳ができるのであれば午前午後あわせて2、3回搾乳して母乳パックを作り、自宅や保育施設で飲ませてもらえるように相談してみましょう。 平成14年からどこの認可保育所でも、お母さんの申し出があれば搾母乳(冷凍母乳)の受け入れを断ってはいけないと厚生労働省から通達が出されています。保育施設と相談してみましょう。
A.哺乳びんやミルクの使用についても保育施設ごとに対応は様々なので、哺乳びんやミルクに慣らす必要があるかどうかは実際に確認してみましょう。お母さんの申し出があれば、搾母乳を哺乳びんではなくコップで飲ませてもらえる施設もあります。 哺乳びんやミルクを使わなくてはいけない場合は、お母さん以外の人に練習してもらうとよいでしょう。おっぱいがあるお母さんがいるのにどうして哺乳びんを使わないといけないのか、お子さんが困惑してしまうことがあるからです。お父さんやおばあちゃんなどの手を借りて、お母さんのお仕事中はこれで飲んでね、などと話しかけながら練習してもらえるように伝えましょう。 保育施設にお子さんを預けるときには、 「迎えの時間の遅れ」・「緊急時の連絡・対応」・「施設の保育方針(母乳の受け入れ状態・アレルギー対応)」などについて家族と確認しておくと良いでしょう。以下のサイトも参考になるかもしれません。 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/hoiku/tp1212-1_18.html
A.お子さんの欲求に合わせてあげようと頑張っているけれど、頻繁の授乳でお困りなのですね。この時期のお子さんは、お母さんが近くにいることを確認するためにおっぱいを吸うこともあります。一緒に食事やお昼寝、夜も一緒に寝るなどして、言葉や態度でいつも一緒にいることを示してあげましょう。お母さんがいることで安心し、おっぱい以外のことに興味を持てば少しずつ哺乳回数が減るかもしれません。もしくはお子さんはまだ一人ではどのように遊べばいいのかわからないのかもしれません。いっぱい一緒に遊んであげましょう。外に遊びに行ってみるのも良いようです。 また、お母さんが早く吸うのをやめないかなと思っていると、お子さんは不安を感じてなかなか離れようとしないこともあるようです。満足するまでいっぱい吸っていいよ、と安心させてあげましょう。
A.お子さんに歯が生える頃や生えてきてから、時々お母さんのおっぱいを噛むことがあります。以前は歯が生えてくるためにかゆいからと言われていましたが、どうもそうではないようです。 お母さんの「イタイ!」という反応を面白がったり、お母さんに気にかけて欲しくて噛んでしまうこともあります。もしかしたら、おっぱいを吸わせながらTVを見たり、スマホをいじったりしてはいませんでしたか?しっかりお子さんに向き合って授乳しましょう。その他におっぱいが出にくくなっている時や乳腺炎になりそうな時、微妙なおっぱいの変化を感じ取ったお子さんが、おっぱいをかじって知らせてくれることもあります。おっぱいに変わったところがないか、確認してみましょう。 かじった時のお母さんの反応を面白がっているような場合は、無理に離して大きな声を上げたりするなどせず、落ち着いて冷静な態度でお子さんの目を見て、痛いのでやめて欲しいことを伝えましょう。 でも、夜間に添い乳で飲ませている時などに、寝ぼけて噛まれるのはとても痛いですね。お子さんが寝入ったら、そっと口からおっぱいをはずしましょう。
A.赤ちゃんも生後半年頃になると、体が大きくなり動きも多くなるため、母乳以外からも栄養をとり始める必要があります。母乳で不足する栄養を補うという意味で、離乳食は「補完食」とも言われます。様々な味や固さに挑戦して慣れていき、モグモグごっくんや、手づかみ食べの練習をしつつ、生活リズムを整え、家族で楽しく食事をする準備をします。 始める時期は生後5〜6ヶ月ごろ、頸がしっかり座って食べ物に興味が出てきたら、日中の機嫌が良い時に始めてみましょう。授乳の回数を減らしたり、間隔をあける必要は有りません。離乳食を食べるようになっても母乳は欲しがるだけ飲ませましょう。 初めの頃は五倍粥や軟らかく煮て裏ごしした野菜をスプーンであげてみましょう。 食べる時は、抱っこでも座らせても構いませんが、安定した姿勢をとりましょう。周りに気になるおもちゃがあったり、テレビがついていたりしない方が落ち着いて食べられますね。 慣れてきたら回数を、2回、3回と増やし、生活のリズムを作っていきます。また、成長過程で必要量が増えるエネルギーや鉄、亜鉛、ビタミンが取れるように豆、魚、肉、乳製品、卵などと1週間程度ごとに新しい食材を増やしていきます。母子手帳の記載も参考になります。じゃがいもや野菜、果物、さらに慣れたら豆腐や白身魚など、種類を増やしていきましょう。魚は白身魚から赤身魚、青魚へと進めていきましょう。ヨーグルト、塩分や脂肪の少ないチーズも良いでしょう。加熱してからほぐしたりつぶしたり、ちいさく刻むなどして食べやすく調理した脂肪の少ない鶏肉、豆類、野菜(緑黄色野菜も)、 海藻と種類を増やしていきましょう。早寝早起きをし、たくさん遊んでお腹をすかせ、家族で楽しく食事をしましょう。
A.食べる量には個人差が有り、時期によっても変わります。お腹が空きすぎても嫌がる場合がありますので、離乳食が進まない時はタイミングを変えてみましょう。薄味の味付けをしたり、小分けにして回数を増やすのも一つの方法です。誰かと一緒に食べるといいかもしれません。おじいちゃんおばあちゃんがいるご実家やお友達がいる場所、保育所などの方がつられて食べるお子さんもいます。 離乳食のことで心配が有れば、健診で相談したり、保健センターなどの離乳食教室や栄養士さんの訪問栄養指導などを利用してみるのも良いでしょう。 また、8〜9ヶ月頃から、赤ちゃんが自分で食べたがるようになります。手づかみ食べをどんどんやらせてみましょう。こぼすことも多いですし、上手く飲み込めない時は口から出すこともよくあります。慣れるまで暖かく見守りましょう。 フォローアップミルクは9ヶ月以降使える食材の一つで、母乳の代わりではなく、必ずしも与える必要は有りません。離乳食を作るのが大変な時は、取り分けやベビーフードなどを利用しましょう。 離乳食を食べるようになっても母乳は欲しがるだけ飲ませましょう。 参考文献 厚生省 授乳・離乳の支援ガイド https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf WHO 補完食 https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/66389/WHO_NHD_00.1_jpn.pdf?sequence=2 参考資料 神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレット1 たのしくたべる http://www.kanagawa-syounihokenkyoukai.jp/images_mt/Henshokugairai.pdf 神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレット2 いつどこでたべる? http://www.kanagawa-syounihokenkyoukai.jp/blog/images_mt/henshokugairai%20stepup.pdf
A.「乳腺炎は、圧痛、熱感、腫脹のあるくさび形(※)をした乳房の病変で38.5℃以上の発熱、悪寒、インフルエンザ様の体の痛みおよび全身症状を伴うものである」と定義されています。(※「腫脹のあるくさび形」とは、「乳房の部分的な硬さ」の事です) 人によって症状の出方は様々ですが、なんか乳房が変だなあ、硬いなあ、痛いなあ、熱っぽいなあ・・どれかを感じたら乳腺炎が疑われます。乳房を見て触って他の症状が有るかどうかをチェックしてみてください。
A.母乳は無菌の液体ではなく、通常でも乳汁中とお母さんの乳房表皮には常在細菌が存在しています。乳汁中の細菌の存在自体が感染を引き起こすわけではなく、うっ滞による乳汁中の細菌数の増加や母体の免疫力の低下などの諸条件が加わることにより、乳房の炎症や感染が生じ悪化すると考えられています。 <主な要因> ①お母さんの要因: 乳頭に傷が有る、乳汁分泌過多、乳頭上の白斑や乳管閉塞、母親の病気、母親のストレスや疲労、乳房への持続的な圧迫(きつい服、ブラジャー、抱っこ紐、シートベルト等)、乳房の打撲など。 ②授乳に関する要因: 授乳回数が少ない、回数や時間を決めた授乳、授乳をとばす(休む)、急に授乳を止めるなど。 ③赤ちゃんの要因: 赤ちゃんの吸い付きが弱い、またはうまく吸えずに十分に乳汁を飲みとれていない、赤ちゃんの病気など。
A.助産院ではしこり、疼痛、発赤が有っても体温が37.5℃未満であれば授乳方法の見直しや搾乳、場合によっては乳房ケアを行い、症状の改善を図ります。37.5℃以上の発熱がある時、全身状態がひどく悪い時、適切な対処をしても24時間以内に症状に改善の見通しがなければ医師の診察を受けるようにします。必要時は鎮痛薬や、抗菌薬の処方がされます。状況によっては、患部の穿刺や切開がなされる事も有ります。 いずれの場合でも、お母さんは授乳や搾乳を継続します。授乳のときの注意は乳頭痛のページをご参照ください。
A.乳腺炎発症の要因は乳汁のうっ滞(母乳が溜まること)や感染ですので、まず授乳や搾乳で乳汁を出すようにしてみましょう。 **以下のことを1~2日実行してしても良くならない時や37.5℃以上の発熱がある時は、地域の開業助産師や、医療機関(産科か乳腺外科)に相談しましょう。 ① 乳房からうっ滞した乳汁を取り除く授乳の工夫と乳房のケア ・ 乳汁うっ滞を改善することが重要です。しこりや、痛み、発赤などが無いか乳房をチェックし、乳汁うっ滞の兆候にはすぐに対処しましょう。赤ちゃんが適切に吸着でき、制限のない授乳を行い、張りすぎているときには手による搾乳をします。利用できれば搾乳器でも良いでしょう。可能であれば症状のある方向に赤ちゃんの下顎か鼻が来るような授乳姿勢をとるのも効果的です。 ・ 乳汁の流れを促すために授乳中に患部を手のひらで乳頭に向かってやさしく圧迫してみます。 ・ これまで以上に症状がある方から頻回に授乳しましょう。痛みが強くて辛い時は問題がない方から授乳し、母乳が流れ出して(赤ちゃんがゴクン、ゴクンと飲み始めて)きたら、トラブルを起こしている方を飲ませるのも良い方法です。 ・ 直接授乳後も苦痛なうっ滞が良くならない場合は、手で搾乳を行います。その際は乳房に痛みを感じないような力で行います。搾乳器を使っても良いですが、圧力の調整をして無理な力が加わらないように注意します。 ・ 授乳または搾乳直前に乳頭乳輪部を心地良い温かさ程度に温めることで、乳房から乳汁を流れやすくします。授乳や搾乳の後は温湿布を行わず、乳房の痛いところは保冷剤をタオルでくるんだもので冷やしてみます。心地よい冷たさで十分です。3時間以上空けない位のペースで授乳や搾乳を繰り返しましょう。痛みや発熱が有る場合、病院で消炎鎮痛剤(イブプロフェン等)が処方されることがありますが、内服しても構いません ・ 状況によっては地域の助産院や、病院の母乳外来などで助産師による乳房ケアを受けるのも良いでしょう。 ② お母さんのストレスと疲労の軽減(母体は休ませ、乳房は休ませない!) ・ 頻回授乳とお母さんの安静を両立させるため、一緒に寝起きして、楽な姿勢で授乳しましょう。 ・ 家族に安静の必要性を説明して、日常生活や家事の負担を軽減できるように調整しましょう。 ・ 重症な場合や家族の援助が十分受けられない場合は、病院や助産院に赤ちゃんも一緒に入院し、支援を受けることを考慮しましょう。 ③ 食事について 食事や水分は制限したり過剰に摂取したりせずに、バランスよく適量を摂取しましょう。  ※現在のところ、特定の食品が乳腺炎のリスクになるという根拠は有りません ④ 衛生管理をします。 一般的に乳腺炎の原因になりやすい黄色ブドウ球菌は皮膚に存在しているので、手指の衛生、衣類、タオル等の衛生を心掛けましょう。 **以上のことを1~2日実行してしても良くならない時や37.5℃以上の発熱がある時は、地域の開業助産師や、医療機関(産科か乳腺外科)に相談しましょう。 参考文献 1、公益社団法人日本助産師会 母乳育児支援業務基準検討特別委員会:母乳育児支援基準 乳腺炎2015 株式会社日本助産師会出版 2015 2、井村真澄:乳腺炎の予防と治療 母乳育児スタンダード第二版 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会編集 P309~321 医学書院 2015  3、UNICEF/WHO赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援ガイドベーシックコース 乳房緊満、乳管閉塞、乳腺炎 P246~251 医学書院 2009
A.おっぱいを飲ませても、「1時間もしないのにすぐに欲しがる、寝ない」「ちゃんと飲めているのかな」「体重が増えているのかな」「おっぱいの張りもなくなった」などと感じ、母乳が足りていないのではないかと不安なのですね。  赤ちゃんがおっぱいを頻回に欲しがるのは、母乳の消化が良いためです。母乳は1時間半から2時間で消化されて腸に移っていくので、3時間経たずにお腹がすくのです。 そしてもう一つ、赤ちゃんが頻回におっぱいを欲しがる「急成長期」といわれる時期があります。産後3週間から1ヵ月の頃、3ヵ月頃です。この時期は頻繁におっぱいを欲しがったり、張らなくなったりして母乳が足りないのでは、と感じてしまうかもしれません。しかしこれは一時的なものなので赤ちゃんの要求に合わせて授乳回数を増やしてみてはいかがでしょうか。そうすることでおっぱいがさらに分泌し、どんどん成長していく赤ちゃんにとって必要な量が出るようになります。  3ヵ月くらいまで、赤ちゃんの平均授乳回数は1日10~12回です。もちろんこれより多い場合もあります。回数が少ない場合は、1回に飲める量が多くて足りているのかもしれません。  また、赤ちゃんの排泄(おしっこやうんち)の回数や皮膚の張りやツヤ、機嫌のよさでも母乳が足りているかを判断することが出来ます。例えば、1日6~8回以上薄い色のおしっこ、1日2~4回のうんちが出ていれば母乳量は足りていると考えてよいでしょう。乳幼児健診などで赤ちゃんの成長の経過を確認していくことも大切です。心配なときには小児科医、助産師、栄養士などに相談してください。  1日に何回も飲ませるのは大変だと思う事もあるでしょう。しかし母乳育児がしっかり確立するには2か月程度かかると言われています。ご自分の休息もとれるようにご家族などに手伝ってもらいながら、赤ちゃんの生活リズムに合わせて授乳していきましょう。
A.夜、赤ちゃんが寝るようになると、起こして授乳したほうが良いのか、今まで夜寝るようになったのにまた起きるようになったなど、赤ちゃんの睡眠と授乳について悩む方も少なくありません。 夜間の授乳回数は、赤ちゃんの成長や発達などにともなって変化します。 <生後間もない頃> 生後間まもない赤ちゃんは昼夜関係なく寝たり起きたりし、夜中に何度もおっぱいを欲しがるのは自然なことです。赤ちゃんはお母さんのお腹にいるとき、妊娠28~30週頃から体内時計が働き始め多くは夜型になります。胃が小さく一度に多くの母乳を飲めないので、昼間も夜間も何度も起きます。それは母乳育児を順調に進めていく上でも大切なことです。 体内時計は生後2~3ヵ月頃から昼型となり夜に眠るようになります。 それまでの間は家族に家事などを手伝ってもらい、昼間赤ちゃんが寝ているときに、一緒に休むようにしましょう。 <生後2~3ヵ月以降>   生後2~3か月頃から夜はよく眠るようになり、7~8時間寝るお子さんもいます。  おっぱいが張って苦しくなったり、朝起きて授乳するときにおっぱいが硬くなって赤ちゃんが吸いづらく嫌がることがあります。その場合には、一度授乳するか搾乳したほうがよいでしょう。お母さんやお子さんの状態により個人差がありますが、おっぱいのトラブルがなく、赤ちゃんの体重も順調に増え、おしっこうんちがこれまで通り出ていて、機嫌が良いようであれば、無理に起こさなくてもよいでしょう。但しこれも個人差があり、授乳間隔が空くことで母乳の分泌が少なくなる方もいます。もしお母さんが途中で目覚めたら、授乳か搾乳してみましょう。 <生後5か月以降> よく寝る時期を過ぎると、また夜間起きるようになります。これは赤ちゃんの脳が発達して、寝ぼけるとお母さんを探すようになるためだと考えられています。 もしおっぱいが足りないようであれば、授乳後に泣いたりしますが、授乳後すぐに寝るようであれば母乳不足は心配ないでしょう。 <1歳頃>   お誕生近くになると赤ちゃんは夜起きる回数が増えてきます。これはお母さんを探して安心するためで、多くの赤ちゃんはおっぱいを飲むというよりも、おっぱいをくわえて安心して寝るようになります。 <1歳過ぎから> 同じような月齢のお子さんでも、夜間の授乳回数をお母さんに聞くと、いろいろな声が聞かれます。朝までぐっすり眠るというお子さんもいれば、1~2回起きて授乳すればすぐ寝てくれるというお子さんもいます。1~2時間おきに授乳し全く眠れなくて辛いというお母さんもいらっしゃいます。    夜間の授乳は「精神安定剤」の面もあると言われています。また、お子さんの眠りが浅いことは、寝ている間の無呼吸を減らしてくれるとも言われています。とはいっても、お母さんが寝不足で生活に支障をきたたり、精神的に辛いようなときは、何か対策を考えていくことが必要かもしれません。母乳育児はお母さんやお子さんによって個人差が大きく、ひとりひとり違います。当会では、のびすく泉中央、のびすく仙台で、月一回「母乳なんでも相談(無料)」を助産師が担当しております。何かお困りごとがありましたら、是非ご相談ください。                               参考資料 ①堺武男 母乳育児奮闘記「第14回赤ちゃんの睡眠を考える」 NPO法人みやぎ母乳育児をすすめる会 会員様向けコンテンツ https://miyagibonyu.or.jp/ ②「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会 「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改訂版 https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf ③ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル 「改訂版 だれでもできる母乳育児」  メディカ出版 2000 ④NPO法人みやぎ母乳育児をすすめる会 「初乳から卒乳まで」 2015
A.授乳をする時に気分の悪さ、悲しみ、落ち込んだ気分、不安、いらいら、落ち着きのなさなどの不快な気分を感じる方がおられます。不快性射乳反射、もしくはD-MER(Dysphoric milk ejection reflex)と呼ばれています。 不快性射乳反射(D-MER)は、母乳が分泌する時のホルモンであるプロラクチンが導入 される際に、脳内のドーパミンレベルが一時的に低下することが原因で起こると考えられています。その不快感は射乳する前に突然起こり、30秒から2分以内に治まる、とされています。反射なので、お母さん自身にはコントロールすることができません。「幸せ」とされている授乳で不快な気持ちになることが、異常だと思われてしまうのではないか、と言い出せないでいたお母さんを支援した経験もあります。産後数ヶ月で楽になることが多いようですが、授乳期間中ずっと続いた方もおられるようです。  重症な時には医師に相談してみてください。ドーパミン拮抗剤として非定型抗精神病薬や制吐剤(メトクロプラミド、ドンペリドン、三環系抗うつ薬が有効な場合もある)が効果があると言われています。 参考文献 1)日本ラクテーション・コンサルタント協会、母乳育児スタンダード第2版、p365、2015. 医学書院  2)https://d-mer.org/understanding-d-mer
A.避難所などでは安心して授乳できるように、お子さん連れの方々のスペースを用意する、授乳用のスペースや個室などでプライバシーを保つ、哺乳量が足りている目安(おむつが薄い色の尿で6回/日以上たっぷり濡れる、便も発災前と同じように出ている)をお伝えし、母乳を与えているお母さんには優先的に水や食料が配布されるように手配してください。 「災害など強いショックを受けた時には母乳が止まる」と思っている方は少なくないようです。また、ストレスを感じたり、安心した場所で授乳ができなくなったりすると、オキシトシンの分泌が阻害されて射乳反射が起きにくくなり、一時的に母乳分泌が減ったように感じる方もおられるようです。逆を言えばストレスの少ない、安心した場所では母乳分泌は維持されるということです。災害時には発災まで行っていた栄養方法を、安心・安全に継続させられるように支援していきましょう。母乳には1歳過ぎでも免疫成分が含まれており、避難所などでの感染予防にもなること、保温や母子の気持ちを安定させる効果もあることから母乳は継続してあげられるように、不安から不要な補足をしないように支援していきましょう。 人工乳も与えている場合には、清潔に注意し、哺乳びんやカップなどが消毒できない場合には紙コップを利用する方法もよいでしょう。混合栄養の場合、直接授乳も継続して行えるように支援してください。備蓄された人工乳などは一律に配布するのではなく、必要な方に必要な分を、安全に授乳ができるデバイスとともにお渡しし、飲み残しは確実に廃棄するようにしてください。  補完食(離乳食)もあげている場合には、赤ちゃんせんべいをふやかす、バナナをつぶす、大人の食品からお子さんに合いそうなものを取り分けるなど、工夫してみてください。 アレルギー対応が必要な場合には、避難所の運営者などに申し出てもらうこと、配布された食品の原材料などにも注意してもらうなどして、体調を崩さないようにしていきましょう。 お子さん連れで避難している方の疲れを減らすために、避難所運営上の役割を分担するなども考慮してください。 また災害時に便乗した性被害に遭わないように避難所の環境を調整したり、女性やこどもが独りで歩かないようにすること、洗濯物を干す場所を工夫する、女性用品(生理用ナプキン、下着など)の扱いに気を付けることなども必要です。 参考文献 https://www.jalc-net.jp/hisai/hisai_support.html
A.直接授乳が難しい時には、搾乳して母乳の分泌を維持・促進することができます。 手での搾乳方法: ・搾乳する容器を準備する(搾った母乳を飲ませる場合は、容器の消毒が必要です) ・手を洗う(正しい手の洗い方については、厚生労働省の資料をご参照ください。) www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf ・母乳を出やすくする:ゆったりと座り、リラックスして赤ちゃんのことを想う。乳房を心地よく温める。自分で乳房を軽くマッサージしたりさすったり、指で乳頭をつまんでやさしく刺激する。他の人に背中をマッサージしてもらう。 ・乳房を乳頭から乳輪の周囲に向かって触れて、感触が異なるところを見つける:ひもの結び目やさやの中に並んでいる豆のように感じるかもしれません。親指とほかの2,3本の指で乳輪をはさむようにしましょう。 ・乳管の上から乳房を圧迫します:乳輪をはさむように置いた親指とそれ以外の指を、胸壁に向かって押し、そのまま乳房をはさんで1秒間に1~2回くらいの速さで圧迫します。母乳が出始めるまで、圧をかけたり緩めたりを繰り返しましょう。 ・乳房のあらゆる部分から繰り返し搾る:乳房周囲全体で指を動かして、他の乳管を圧迫しましょう。母乳の出方がゆっくりになったら、もう一方の乳房に移りましょう。必要に応じて両方の乳房で数回繰り返します。 ・搾乳に必要な時間は搾乳する理由によって異なります。初乳のころは5~10分、母乳の量を増やしたいときには1回20分程度(夜間も含めて1日に少なくても6回以上)が目安になるでしょう。
A.*搾った母乳の飲ませ方 搾った母乳を哺乳びん以外で飲ませる方法には、スプーン、カップ、シリンジやスポイトなどがありますが、赤ちゃんがどのくらいの量をどのくらいの速さで飲むのかによって決めればよいでしょう。助産師などと相談してみてください。 カップ授乳 ・清潔な小さなコップなどを使用します。 ・膝の上で赤ちゃんの体を起こして座らせるか、半分ほど体を起こして座らせます。 赤ちゃんの背中、頭と首を支えましょう。布で赤ちゃんをしっかり包むと、背中が支えられて、赤ちゃんの腕が出てきません。 ・乳汁の入った小さなカップを赤ちゃんの下唇に軽くのせ、カップのふちを上唇の外側にふれるようにします。 ・乳汁が赤ちゃんの唇に届くようにカップを傾けます。 ・赤ちゃんの口に乳汁を注ぐのではなく、赤ちゃん自身が飲むのに合わせます。赤ちゃんが口を閉ざし、飲まなくなったら終了します。 *こぼすこともあるので、必要量より多めに準備する必要があるかもしれません。 *赤ちゃんが飲む量は授乳のたびに変わります。必要量を飲んでいなければ、次の授乳を早めたり、量を増やしたり、飲ませる回数を増やす必要があるかもしれません。 *赤ちゃんが飲む量は24時間の合計量で見ます。 【文献】 ・BFHI2009翻訳編集委員 搾母乳の飲ませ方 UNICEF/WHO「母乳育児支援ガイド ベーシックコース」医学書院(2009)p229‐236
A. 2019年に発表された「授乳・離乳の支援ガイド」によると、産後の保護者へのアンケートで「授乳について困ったことがある」と回答した方は約8割で、その中で「母乳が足りているかどうか分からない」が第1位でした。赤ちゃんが順調に育っているのか、時には体重が増えすぎてはいないか、を多くのお母さんが心配しているという結果でした。  赤ちゃんの体重増加を評価するときに、ワンポイントで「多い・少ない」を判断することはできません。その際に有効なのが、母子健康手帳にも掲載されている乳幼児身体発育曲線(いわゆる成長曲線)です。小さな子(成長曲線の下の方)、大きな子(成長曲線の上の方)がいますが、それぞれ成長曲線のカーブに沿って発育していればまず問題ありません。カーブから外れている際には、出生時の在胎週数と体格、栄養方法、身長・体重のバランス、排泄の状況、赤ちゃんの活気や肌の状態、発達は順調か、お母さんの健康状態 などを総合的に考慮して、経過観察で良いのか何らかの介入が必要なのかを慎重に考えます。  赤ちゃんの発育に問題があると判断した場合、単なる栄養不足または過多なのか、隠れた病気(先天的なホルモンや代謝異常、心疾患、その他哺乳に影響する様々な疾患)が無いかどうかをチェックすることも大切です。  最後に、赤ちゃんの発育には個人差があり、一人一人特有のパターンがあります。早く大きくなったから偉いという訳ではありません。赤ちゃんの発育がゆっくりであっても、発達が順調でニコニコして元気であればまず問題はありません。お母さんと赤ちゃんがしっかりとスキンシップをとって、楽しく育児ができることが最も大切です。赤ちゃんの体重増加について心配があれば、是非かかりつけの小児科医に相談してみましょう。