母乳育児とは?

母乳育児は様々な方面からみても、現代科学が到達できないほど優れたものです。

さらに重要なことは、母乳の成分がもたらす利益のみならず、母乳育児を行う過程が、母と子の関係や家族の皆さんの関係に精神的な安定をもたらし、現在社会で大きな問題になっている虐待、いじめ、青少年の犯罪の防止についても何らかの良い意味での効果をもたらすことです。

ご挨拶

特定非営利活動法人 みやぎ母乳育児をすすめる会

理事長 青葉 達夫

 令和2年10月の総会で理事長に就任した青葉達夫です。特定非営利活動法人みやぎ母乳育児をすすめる会(以下すすめる会)の3代目の理事長です。当すすめる会は1993年に、堺武男が立ち上げた母乳育児を支援する「宮城県母乳育児をすすめる会」という任意団体から、2007年2月8日にNPO法人になりました。
 自己紹介ですが、青葉達夫は平成元年に歯科医になり、自身の3人の娘たちの子育てを考えるにつけ、歯科医の立場から、助産師さんたちと独自の母乳育児支援を行ってきました。そこで堺武男に声を掛けられ、すすめる会で一緒に活動するようになり、歯科界が「むし歯になるから母乳をやめろ」という風潮に風穴を開けるべく活動してきました。同時に長年すすめる会の裏方として会のNPO法人化と運営を支えてきました。
 僕は歯医者の中でも小児歯科という分野が専門ですが、小児歯科医としての思いは2つあります。ひとつは、純然たる学問上の興味です。口腔の一番良い状態というのは「永久歯にむし歯がなく、歯周病がなく、噛み合わせ歯並びが良い」という事です。これを実現するには、乳歯の時期から生え代わりを管理して“健康な”永久歯列を創りあげることにあり、小児歯科の分野から始めないといけないからです。ふたつ目は、日本の少子化を何とかすることです。開業当初より保育の有資格者をおき、母の歯科受診中に子どもの預け先が見つからないがために歯科治療を断念しないように、と、兄弟姉妹が多くて、その子の歯科受診の際、ほかの兄弟姉妹の預け先が確保できないために歯科受診をあきらめてしまうことがないような支援を志しました。その中で母乳育児支援は子育て支援の際たるものだということにたどり着きました。
 さて当すすめる会は前身団体の時代から5年ごとに宮城県の母乳率の調査を行ってきました。5年ごというのは全国の母乳率調査と比較しやすいためです。当会の活動により、母乳率は年々向上し、全国で出生後1か月目の母乳率が50%を超えるころに仙台市の同母乳率は8割を超えていました。
 ところが昨年の調査で当県は大きく母乳率を落としました。完全母乳も混合栄養も割合を落とし、産後1ヶ月以降では全期間、人工栄養率が増えました。
 これにはいろいろな原因が考えられます。支援者不足や、保育所に預けるためには人工乳や哺乳びんに慣らさなくてはいけない、という誤解など、当会でもいろいろ議論がありました。その対策を考えなければ、というタイミングで理事長職を引き受けた次第です。
 母乳率の低下の原因として出た意見を少し挙げましたが、本当のところは、もっと根の深いところにあるのかなと思います。このごろ育児がなんだか、やりにくい世の中になって来たような気がします。国民はみな「清潔で、健康で、道徳的である」ことを求められ、秩序のないことには不寛容な時代です。様々な部分で批判され、厳しいバッシングがネット上で飛びかうのも、国民の不寛容さの表れでしょうか。その結果、昔だったら気にも留めなかったことにまで神経をつかうようになり、人々が不安や罪悪感、劣等感を持つことが多くなっています。
 一方、子育てはマニュアル通りにはならず、時に汚く、無秩序で、寛容でなければ耐えられないことの連続です。バス、公共の場で騒ぐ、泣く、汚す、ルールを(知らないから)守らない…それが子どもです。社会がこれらを受け入れられなくなってきたために、さらに子育てが難しいものになってきました。子どもは小さな大人ではありませんから、大人の常識だの道徳とやらを押し付けるのはいかがなものかと思いますし、誰にでもこんな時期はあったはずなのですが。
 この 生きにくい、子育てしにくい世の中で、わが子を育てるための支援をする会にしていこうと考えています。
 僕は、少子化に抗うべく仕事をしていますが、女性は日本の少子化を止めるために子どもを産み、育てているわけではありません。多様な情報や価値観が入り混じって発信され、本当のことを見定めるのが難しい時代になってきていますが、子どもが女性から生まれ、からだもこころも健康なおとなになっていくためには、たくさんの愛情や時間、世話が必要なことに変わりはありません。そして女性が母親になっていく過程、子どもがその子の個性を大切にされて健やかに育つ過程、家族となっていく過程や維持にもたくさんの愛情や支援が必要です。その母子、家族にとって安全・安心・健康で、一番よい子育てができるよう、会員皆様それぞれの強みを活かして、支援する会にしていこうと考えています。
 どうぞご協力、ご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。

母乳育児成功のための10段階(2018改訂版)

(Ten steps to successful breastfeeding)
2018年、WHO(国際保健機構)が25年間の活動を見直し、10steps改定とそれに伴う実践のガイダンスを発表いたしました。みやぎ母乳育児をすすめる会では、昨年2018年10月開催 母乳フォーラム時に堺武男先生が「new10steps」として講演していただきました内容を元とし、訳文を記載いたします。

重要な院内管理の方法

1a.母乳代替品のマーケティングに関する国際的規約(いわゆる「WHOコード」)と
  それに関連した世界保健総会の決議を順守する

1b.定期的にスタッフと両親に伝えるため、乳児の授乳に関する方針を文書で持つこと

1c.母乳育児に関する継続したモニタリングとデータ管理のためのシステムを構築する

2.スタッフが母乳育児を支援するための充分な知識と能力、技術を持つことを確実にする

臨床における主要な実践

3.妊婦とその家族とともに母乳育児の大切さへの取り組みを話し合う

4.出産後すみやかに、中断されない母子の肌と肌のふれあい(早期母子接触)を促進し、
  出生後出来るだけ早期に母乳育児を開始するよう母親を支援する

5.母乳育児の開始と継続、そしてよくあるトラブルへの対処について母親を支援する

6.医学的に適応の無い限り、母乳育児の新生児には母乳以外の食物や・水分を与えてはいけない

7.母親と乳児が一緒に居られ、24時間同室で過ごすことが出来るようにする

8.母親が乳児の哺乳に関するサインを認識し、それに応えることが出来るように母親を支援する

9.母親に哺乳びん、ゴム乳首、おしゃぶりの使い方とそのリスクを助言する

10.両親と乳児が継続した支援とケアをタイムリーに受けることが出来るよう退院時に調整する

(最終投稿日:2019年4月18日)

みやぎ母乳育児をすすめる会について

 みやぎ母乳育児をすすめる会は、宮城県における母乳育児の推進を図り、そのことを通じてより良い母子関係と家族関係が樹立され、こどもたちが心身ともに健やかに育つこと、それを実現できる社会ができることを目的として活動を行う会です。

宮城県のBFH(赤ちゃんにやさしい病院 Baby Friendly Hospital)

 
ベビーフレンドリーなクリニック